大森望編『書き下ろし日本SFコレクション NOVA1』

飛浩隆の「自生の夢」が良かった。
検索エンジンとしてはじまり、後に「GEB(Gödel Entangled Bookshelf)」として全出版物の内容データを取り込むことで自身がデータベース化する「Gödel」。そこにすべての人々の「生の記録」を言語化・保存する検索支援ソフト「Cassy」が加わることで、GEB内にある種の言語的小宇宙が誕生する。
GEBは人々の精神的生活にとってなくてはならないものとなっていたが、GEBの中に「忌字禍」、いわば動的構造としてのアポトーシスが発生することで、GEB自死の危機に陥る。
自死を回避するため、GEBは自らのうちに蓄積された故「間宮潤堂」=言葉で人を殺せた男の記録を参照し分析しエミュレートすることで、忌字禍の打倒を企てる……。


GoogleTwitterのあるいまの世界って、もう片足をSFの世界につっこんじゃってるんじゃないかと思わせてくれる作品だった。


それからこれは直前の円城塔「Beaver Weaver」にも言えるが、人間の敵が「人間」(そのまま人類じゃなくて、人格的、個体的に振る舞うなにか)であるという物語のモデルは、これからどれだけ強度を保てるんだろうか、となんとなく思ってしまった。