「衝撃を受けた名文・美文」

自有五白猫 ウーパイや、お前が来てから
鼠不侵我書 ネズミは私の本をかじらなくなった。
今朝五白死 それなのに、お前は今朝死んでしまった。
祭与飯与魚  お供えに、ご飯と魚をあげようね。

送之于中河 お前を川に流し、水葬したのは
呪爾非爾疎 お前の来世を祈ったからで 決して粗末にしたんじゃないよ。
一従登舟来 この舟に乗り込んでからは
舟中同屋居 いつも一緒だったね。

昔爾齧一鼠 昔、お前はネズミを一匹捕ってきて
銜鳴遶庭除 ニャーニャーと庭を駆け回っていたね。
欲使衆鼠驚 あれはきっと、ネズミどもをおどかして
意将清我廬  家から追っ払おうとしてくれたんだよね。

糗糧雖甚薄 食べるお米も満足になかったけれど
免食漏竊余 ネズミに盗られたり汚されずにすんだのは
此実爾有勤 本当にお前のおかげだった。
有勤勝雞猪  ごちそうになる鶏や豚より お前の働きがありがたかった。

世人重駆駕 世の人は、車を引いたり乗れたりできる
謂不如馬驢 馬やロバが一番いいなんて言うけれど…。
已矣莫復論 ああ、もうあれこれ言う気にもならない
為爾聊欷歔  お前を思って、しばらくしくしく泣いていよう。

梅堯臣(北宋) 「猫祭」  (猫のお葬式)

「陽が昇るから      目を醒ます
 目を醒ますから     腹が減る
 腹が減るから      狩りをする
 狩りをするから     メシ喰える
 メシ喰えるから     金要らない
 金要らないから     仕事しない
 仕事しないから     時間がある
 時間があるから     遊んでる
 遊んでるから       不満がない
 不満がないから     ケンカがない
 ケンカがないから    気分が良い
 気分が良いから     眠くなる
 眠くなるから        陽が沈む
 陽が沈んだら      あと知らない」

ブッシュマンの詩

中1のとき、吹奏楽部で一緒だった友人に、だれも口をきかなくなったときがありました。
いばっていた先輩(せんぱい)が3年になったとたん、無視されたこともありました。
突然のことで、わけはわかりませんでした。

でも、さかなの世界と似ていました。たとえばメジナは海の中で仲良く群れて泳いでいます。
せまい水槽(すいそう)に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃(こうげき)し始めた
のです。けがしてかわいそうで、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナ
別の1匹をいじめ始めました。助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます。いじめっ子
を水槽から出しても新たないじめっ子があらわれます。

広い海の中ならこんなことはないのに、小さな世界に閉じこめると、なぜかいじめが始まるのです。
同じ場所にすみ、同じエサを食べる、同じ種類同士です。

中学時代のいじめも、小さな部活動でおきました。ぼくは、いじめる子たちに「なんで?」と
きけませんでした。でも仲間はずれにされた子と、よくさかなつりに行きました。学校から離れて、
海岸で一緒に糸をたれているだけで、その子はほっとした表情になっていました。話をきいてあげ
たり、励ましたりできなかったけれど、だれかが隣にいるだけで安心できたのかもしれません。

ぼくは変わりものですが、大自然のなか、さかなに夢中になっていたらいやなことも忘れます。
大切な友だちができる時期、小さなカゴの中でだれかをいじめたり、悩んでいたりしても楽しい
思い出は残りません。外には楽しいことがたくさんあるのにもったいないですよ。広い空の下、
広い海へ出てみましょう。

東京海洋大客員助教授・さかなクン

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