『政治学事典』(弘文堂、2000年)

「大衆」(奥井智之)
大衆は人間の社会的な存在規定の1つ。英語のmassは元々「かたまり」という意味をもつ。それは大衆の量的な大きさと質的なとらえがたさとを暗示している。
……いずれにしても大きな、とらえがたい人々の集団が社会の前面に登場してきた(それは大衆社会の到来を意味する)、ということに大衆の概念の特徴はある。その意味では大衆の概念には、異物の侵入に対する社会の免疫反応といった一面がある。


大衆社会」(オフェル・フェルドマン)
個人が原子化した大衆となり、社会の前面に出現した状況。特徴として社会移動性の拡大、社会の分化と拡大の進行、伝統的な価値体系の崩壊、連帯感の希薄化などがある。
……結果として同じ思考や欲求、行動をとりながら相互の連帯感の希薄な人々からなる大衆社会が成立することになる。


日本で大衆社会が本格的に出現したのは第2次世界大戦後、給与労働者層が増大して都市部に集中し、かつ経済成長にともなって大量消費に対応する所得水準を得たことにもよる。